いつか口癖が変わる日まで

書く事が夢でありますように

女性15名のポートレート(5/15)

 

まずは食事、そして話の聞き役として会うことになった。

私はビールを飲み彼女はソフトドリンクを飲んでいる。

アルコールのせいで私が饒舌になり始め、それにつれて彼女も少しづつ自分の事を話し始める。

気づくと彼女はある一夜の逢瀬を話し続けている。いくらか優秀な聞き役である私が退屈し始めているのだから結構な時間が過ぎたのだろう。

そうしているうちに私は少し意地悪をしたくなって言ってみた。

ミラン・クンデラの小説でね、存在の耐えられない軽さって小説があって、その中でこんなドイツの諺がよく引用されるんだ。

『一度は数のうちに入らない』

含蓄に溢れていると思わないかい?」


すると彼女は急に黙り込み、親指の爪を噛んでるようにしながら、じっと私の方を見た。

泣いちゃうかな。
どぎまぎし言った事を後悔し始めたとき、

「ふふふ、女心を分かってないわね、その何とかって人も、あなたも。

それじゃあ、数のうちに入らない今夜の私との一回もナシってことでいいわね?」

と彼女は得意げに言った。

意地悪の仕返しとしては実にアンフェアだ。

舌を出し「ごめんね」と言いながら領収書を持って会計に向かい「割り勘だからねー」と叫んでいる。

そんな女性もなかなか素敵なもんだ。