いつか口癖が変わる日まで

書く事が夢でありますように

女性15名のポートレート(8/15)

 

場末のホテル。
下品に暗い照明の部屋。
煙草の匂いが染みついている。

私達はまず部屋に着くなりコトを済ませる。

コトを済ませると私達はそれぞれに別々の小説を読み始める。

君は裸で片膝を立て煙草を片手に本を読んでいる。

僕は缶ビールを読みながら仰向けで本を読んでいる。

僕は素晴らしいと思える一文に出会い、
朗読を始める。

「もしご自分の日常が貧しいものに見えるならば、その日常を非難しないで、ご自分を非難しなさい。自分は十分な詩人でないから、
日常の豊かさを呼びだすことができないのだ、と自白しなさい」

誰?それ?

君が言う。

リルケ

ふーん。

私達はまたお互い読んでいる本に没頭する。

沈黙。

おもむろに君が朗読を始める。

「人生では、大切なことは何ごとにかかわらず、すべてのことに対して先験的な判断を下すことである。そうすると、実際、大衆が間違っていて個人が常に正しいということがわかってくるのだ。そこから行動の指針を引き出すのは考えなければならない。何もわざわざことばにしなくても、黙ってそれに従ってればいい、二つのことがあるだけだ。それは、きれいな女の子との恋愛だ。それとニューオーリンズデューク・エリントンの音楽だ。その他のものはみんな消えちまえばいい」


ボリス・ヴィアン
僕が言う。


そう。
好きなの?
と、君。


うん、と僕。

へぇ、と君。


沈黙。

 

僕が言う。

「もう一回したい」

君は僕を一瞥して言う。

「それも真理ね」