あなたの後ろ姿を見ている。
あなたはコートを着ている。
ごく普通の黒いコート。
「まほうの黒いローブ」
そんな風に言いたくなるのは僕がゲームオタクだからと言うわけではなくて本当に不思議な力が溢れて見えるから。
そういう風に感じることはよくある。
例えばさっき食事してた時にあなたが使っていたナイフ。使い終わってテーブルの上に置かれていたナイフもやっぱり不思議な気配をまとっていた。
「まほうの銀ナイフ」だ。
「黒いコート」や「ナイフ」はあなたとは別の物体であるのにあなたが触ったりしたことであなたの一部として存在するようになった。
そんな事を考えながら駅に向かう。
今日はこれであなたとお別れ。
不意にあなたが後ろを振り返る。
あなたは微笑んでごく普通の事を僕に言った。
「じゃあね」
その言葉は闇夜に放たれ、
私の心を物理的に締めつける。
あなたは魔法使いなんだろうか?