あとまわし

書く事が夢でありますように

ぴすとる

わたしは家にかえるとちゅうだった。


左手に傷ができていて

本当は「いたい」って言えば

よかったんだということはわかってた。


そしたら、ともだちが心配してくれたかもしれないしママもどうしたのって聞いてくれたかもしれない。


でも傷をずっと見てたら、

わたしは本当は痛がってなんかいない

のだという気がしてきて、

うそをついてるような気分になった。


だからわたしは傷の痛みは宝箱に入れて

しまって見えないようにしたの。


そしたら左手に傷だけがのこった。

わたしは傷をつけたあの子のことは、

もうどうでもよくなっていた。


でも、帰りみちにまた出会ってしまった。


わたしはそっと傷を見た。

宝箱のなかはじんじんしてたみたいだけど

わたしはもう痛いっておもってなかった。

痛がるフリはしないし、がまんもしてない。


あの子の方を見たら、

あの子はわたしのことを見ていた。


そしたらなんだかおもしろくなって、

笑けてきた。


そのとき、わたしは自分の右手が

「ぴすとる」をにぎっていることに気づいた。それはすごく小さくて軽かった。


どうしてそんなものをもってたのか

分からないけど、わたしはあの子を見ながら

「ぴすとる」をにぎりしめた。


傷はぜんぜん痛くない。

あの子もどうでもいい。

がまんもしてない。


どうでもいいってことが、

どうでもいい。


そしたらわたしの右うでが

かんたんにふりあがった。

わたしは笑っていた。


なんとも思わないあの子に、

わたしは狙いをつけて、

そっと引き金をひいて、

あの子のむねをうち抜いた。