あとまわし

書く事が夢でありますように

毛布

何処かにありそうな空間で僕は会ったこともない昔からよく知っているたくさんの人達が現れては消えていく心地がする。

一人の女性は悲しそうな表情で僕を見つめているが、毛布に包まれているかのように見えていたのは後ろの男性のせいだった。

うわぁぁ。もう僕はダメだぁ。すっかり毒されてしまったぁぁぁ。もう僕のことはほっといてくれぇ。もうそいつはダメだ、近づかない方がいい。だって見た目は全然変わらないじゃない、それに私はゆうのことが......。えーんえーん悲しい。おまえどうしたんだよ、いったいどうしてしまったんだ。それが僕にもよくわからないのです。どうしたんでしょう、しくしく。

昔のあなたが戻ってきてほしいの。それはムリだよ、もう遠く彼方にあいつは行ってしまったんだろう。ううん、僕はまったく動いてなくてずっと同じ処にいるはずだけどおかしいな。毛布は少しづつカタチを変えていく。彼女の影とつながって覆いかぶさる波になっていく。もういなくなったやつのことなんて忘れよう。彼女にかかった毛布は飛沫をあげるみたいに強く首元をくすぐって何だか蠢く生きもののよう。もういないの?そうだよ、もういなくなってるんだ。僕はまだはここにいるよ。

はぁはぁしてる二人の吐息が僕の頬を撫でる。思わず硝子の部屋に逃げこむ。蒸気があたりを包む。硝子には靄が。水滴が。
あたりが霞む。くらくら。びしょびしょだよ。そんなこと言わないで。水滴がどんどん硝子をつたって靄を連れていく。ずっとよく見えるようになった。ずっとずっとよく見えるようになったんだよ。