あとまわし

書く事が夢でありますように

今度こそ忘れないようにする

気がついたらお坊さんがもう近くまで歩いてきていた

通り雨が上がって急に日が差し始める
砂利道から湯気が上がる
日差しで首筋が痛い

汗が背中とかお腹を流れているのを感じる
ワイシャツが汗を染み込んでいく

蝉の鳴く声が遠くから聞こえてくる

「晴れ男と晴れ女ですね」

お坊さんが笑いながら話した
みんなつられて笑顔になった
空気が和む

お経が始まりだした

お経と蝉の鳴く声が混ざる
抑揚のない音が間断なく続く
線香からの煙と地面からの湯気も混ざる
空が青い

睡眠不足でまどろんでいく
目を開けていられない

6年前のあの日、順を追って思い出す
早朝の病室、集中治療室での囁き声、
炎天下での電話、仮眠をとってしまったこと、深夜の集中治療室の騒々しさ、明け方の医師と看護師との会話、装置を止める決断

目を開けるとお経が続いている

思い出さなければならないのは
そういう事じゃないと思う

ありえないと思うことが起きたりする
自分の子供に先立たれたりする
そういうことが起きたりする
今度も何がいつ起きるかなんてわからない

だから、

もっと思いのままに生きなければ

今度こそ忘れないようにする