夏の空耳。
夏になると飲みたくなる三ツ矢サイダー
ペットボトルを片手に田圃を眺めていた。
炎天下だったけど、
一人で田圃の前に立つと涼しかった。
鉄塔の電線で風が割れる音。
足下を流れる水路を通る水の音。
風は稲の上に足跡を残したように通った。
あたりには誰もいない。
音って不思議だ。
あの音もこの風の音も、
名前のない音なのだろうか。
ただ通り過ぎていくだけ。
からになったペットボトル
飲み口から風の音がしだした。
目に見えない風から音がしている。
もしかしたら、
私はたくさんの音を
聞き漏らしていないだろうか。
たくさんたくさん。
誰かの見えない声が吹いている。
あたりを通った跡は見える。
私と共鳴すれば
音は起きるのだろうか。
少しづつ鳴き始めたはずの音。
名前は知らない。
音がしている気だけはする。