あとまわし

書く事が夢でありますように

私以外は満ち干き

浅瀬だった。
遠くに見える浮きが
空と海の境界を行き来していた。
近づいてきたり近づいていると
勘違いしていた。
景色は変わり身体はゆらぎ
足の裏にも進んだという感触がある。
錯覚だった。
足先から遠ざかる砂
二度と戻らない波
抱きよせる波間の柔肌
あらゆるが通り過ぎていて
私だけが突っ立ていたんだ
潮の満ち干きに気づかずに。

進んでいるのか後戻りをしているのか。
私は砂浜に腰を下ろすだろう。
波に漂う浮きは空を昇る。
残された気配はますますよく見える。